原文
ブラックリバー株式会社は、他のバイオロイド企業とは明確に異なる。
ブラックリバーは、本来製造会社ではなくバイオロイドを売って利益を上げる会社でも無かった。
ブラックリバーは、バイオロイドの使用で成長した会社であった。
ブラックリバーの起源をさかのぼると、なんと20世紀に設立されたPMC、プライベート傭兵会社をその起源とする。本来
ブラックリバーはリオボロス家が保有している穀物会社であるグリーンインターナショナルが秘密裏に投資した会社だった。全世界の穀物を動かすグリーンインターナショナルは、自分たちが持っ世界の穀物覇権の妨げになる国やテロ組織などを制圧する力が必要だった。
ブラックリバーは、その役割を忠実にこなしてきた。2035年のアルゼンチンで行われた白い宮殿クーデター[注1]や2039年、リベリアの独裁者ジョージクモンの長期政権などに関与したのも
ブラックリバーであった。
ブラックリバーの状況が劇的に変化したのは
アンヘル・リオボロスが関わるようになってからである。一族の庶子で
ブラックリバーの一部を受け継いだ
アンヘル・リオボロスは自分の境遇に納得できなかった。PMCを率いマルゴーの巨大な富を守る番犬となるのは自分にふさわしくないと考えた
アンヘル・リオボロスは、自分が持っている非常に特別な地位を利用して家を覆す計略を練った。
彼が注目したのは、まさに当時流行したバイオロイド産業であった。まだ実用化こそされていなかったが、バイオロイドの力強さ魅せられた
アンヘル・リオボロスは家庭用の女性型のバイオロイドに力を入れた
三安産業とは異なり、最初から軍事用に使用男性型バイオロイドの製作を目標とした。このため、
アンヘル・リオボロスは、自分の全財産を売って、当時、米国ではかなりまともな技術力を持っていた
バルキリーバイオロイド会社を買収した、そこから
T-1ゴブリンを開発することに成功した。
T-1ゴブリンは、革命であった。少なくとも防御では
AGSシステムが最良の選択であることが常識であったが、攻撃に使用する場合、機械を利用した人間虐殺という良くない先例を残しやすかった。米国が介入していた第7回南オセチア戦争でも軍事力を行使した米国がAGSを使用したという理由だけで世界的に非難を受けた例もあった。しかし、この
T-1ゴブリンは違った。人間と同じようなこの奇跡の生物は、虐殺というイメージを確実に軽減しつつ
AGSのよう圧倒的な軍事的優位を維持するように作られた。試験的に投入した戦いで
T-1ゴブリンは圧倒的な勝利を収めた米国政府から歩兵(Trooper)1号、つまり「T-1」という歴史的なコードを受けることに成功する。
リオボロス家で
アンヘル・リオボロスの地位は上昇した。
アンヘル・リオボロスがもたらしたこの軍事力は世界を動かし、リオボロス家の財産を確実に保護してくれる。
アンヘル・リオボロスもそれを利用して家の長老たちを動かし始めた。しかし、いくら能力があっても保守的な長老たちのほとんどは後継の第一位であったファンを支持した。
アンヘル・リオボロスは絶望し、最終的には、残酷な選択をするしかなかった。
アンヘル・リオボロスは
T-1ゴブリンを利用して一族の赤字を一つ一つ解消し、自分に反対する長老を脅迫した。やっと元老たちは
アンヘル・リオボロスが持つバイオロイド軍の本当の威力を悟るようになり絶望した。そしてついに
アンヘル・リオボロスはリオボロス家とグリーンインターナショナルという王国の所有者となった。
アンヘル・リオボロスは穀物から出る巨大な資本とバイオロイド軍隊という強力な軍事力を手に、縦横無尽に世界中のさまざまな紛争に干渉し始めた。当時衰退して行っていた米国政府は非難を避けるため、遠征には常に
ブラックリバーを動員した。そこには、バイオロイドは絶対に
AGSの相手にならないという計算もあった。それは一定の部分の事実でもあった。
歳月は経過し
アンヘル・リオボロスの王国はますます硬く巨大になった。一時期は自分の遺伝子をベースにした
T-1ゴブリンの暴力性があらわれる事件のために、彼の株は暴落したが、迅速なリコールと廃棄を約束し、
T-1ゴブリンの後に続く
T-2 ブラウニーを素早く生産ラインにのせ危機を脱することができた。彼の軍隊はどの新しい世界に向かって広がっていた。米国政府も、自分たちの
AGSで十分制御可能な
アンヘル・リオボロスの軍隊が世界中を駆け巡る状況を心配していなかった。
さらに歳月が流れて、自分が年を取った
アンヘル・リオボロスは遠い未来に備えていくつかの準備を開始した。王国の経営のために
アンヘル・リオボロス自身の寿命を延ばすための研究、自分に被せられた
AGSからの束縛を取り除く計画、そして地下深くの冷凍倉庫で眠っている大量数の
T-1ゴブリンなど。誰も
アンヘル・リオボロスが持つ力と知識の秘密を知らなかった。
結局
アンヘル・リオボロスは、自分のライバルであった
三安産業の
キム・ジソクと
PECSコンソーシアムの老人たちと手を取り合って
連合戦争を起こし、世界中の政府を無力化させた。殻は残したが、政府は、現在、同社の資本というニンジンとバイオロイド軍隊という鞭の前に逆らうことができなかった。
アンヘル・リオボロスは、自分の縄張りに米国東部と北欧の一部、西アフリカ、アルゼンチンおよびチリを分配させた。もちろん、
アンヘル・リオボロスは全く満足しなかった。
そんな中、
アンヘル・リオボロスは
三安産業の
キム・ジソクが非常に貴重な技術を手に入れたと知る。
三安産業が地球外生命体と推定されるMP
NW101を発見したものである。老いを心配していた
アンヘル・リオボロスは、その塊生命体が持つ半導体系の中に永遠の命の秘密があると考えた。
アンヘル・リオボロスは、すぐに自分の諜報活動を担当していた
080機関を動かした。しかし、
三安産業の警備は厳しく、冷酷な
キム・ジソクはこの挑発に積極的に対処。
第2次連合戦争が起こった。
しかし、彼は目の前の敵に気をとられ、より大きな敵見られなかった。
鉄虫が空から落ちてきた日、
アンヘル・リオボロスは自分の基盤の半分以上を失った。彼は急いで
キム・ジソクと手を握って、その証として、自分たちが持っている最高のバイオロイドをそれぞれ交換する特別な取引をした。自分のスキルを完全に出すことは一種の人質だった。それにより
三安産業の
ラビアタ・プロトタイプと
ブラックリバーの
無敵の龍は好感された。しかし、この同盟は、最終的に勝利を掴めなかった。
アンヘル・リオボロスとリオボロス一族の長老たちは、誰も知らないバンカーの中で
ヒュプノス病にかかりすべて死亡してしまった。最強のバイオロイドだった
ラビアタ・プロトタイプは
ヒュプノス病から新しい所有者を守ることはできなかった。
世界を狙っていた
アンヘル・リオボロスとリオボロス家は寝入った。自分たちが隠しておいた巨大な秘密と財宝と共に。
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コメント
1.食糧資源を国有化しようとしていたアルゼンチンのスラ大統領に対抗して国防長官であるフアン・マリアベニテスが反乱を起こし、独裁政権を立てた事件。